「傲慢と善良」を読みました。
所感
物語自体は恋愛がテーマでしたが、随所に辛辣な意見が散りばめられていて、読んでいてハッとする場面も多かったです。読む人によっては少しダメージを感じる部分もあるかもしれません。
登場人物も、現実にいそうな人ばかりでした。「ああ、こういう人、実際にいるなぁ」と思いながら読み進めるのは、ちょっとした共感があって楽しかったです。
「どうしてもそうしたいと思わないなら、人生は好きなことだけでいい。興味を持てないことは恥ではない」という言葉が強く心に残りました。普段、何かをしなければならないという焦りを感じがちな私にとって、少し肩の力を抜いてもいいんだと教えてくれるような一文でした。
傲慢さと善良さが矛盾なく同じ人に存在する時代
- 「一人ひとりが自分の価値観を重視し、自分の価値観を押し出す傲慢な面と、他人の期待に応えすぎて『自分らしさ』を失ってしまう善良な面が、同じ人の中で共存している時代なのではないか」という描写がありました。傲慢な面も、見方を変えれば自分の価値観を大切にしているということなのかなと感じました。最近は、自分の価値観を尊重する考え方が重要視されている一方で、恋愛とこの価値観が必ずしも相いれないこともあるのかもしれません。
婚活の「ピンとこない」という感覚の裏に、自分が無意識に設定している「値段」、つまり自分で自分に付けた評価が影響しているという描写が印象的でした。自分が自分につけた点数に見合う相手が現れないと、そう感じてしまうのかもしれないという気づきは、なるほどと思わせられるものでした。
終わりに
辻村深月の本を初めて読みました。
他の小説に登場するキャラクターが、物語の途中で出てきます。
別の物語のキャラクターが登場することで、同じ世界観でつながっているような気がして、そういう設定がとても好きだなと思いました。